2023年6月09日
[舞台鑑賞] アグレッシブダンスステージDEAR BOYS
2.5次元ミュージカル・ライブシアター

池袋のシアターミクサで上演中の「アグレッシブダンスステージ『DEAR BOYS』」を鑑賞。原作は、八神ひろきの同名マンガ(1989〜97)で、2003年にはアニメ化もされているバスケットボールを題材にした人気作品。実は2007年にミュージカル化されていて、2.5次元舞台の代表ともいえる『テニミュ』(ミュージカル『テニスの王子様』2003年〜)と同時期に上演されていた、スポーツマンガ・アニメ原作舞台なのだ。2007年の舞台は実際に見に行けなかったけれど、実際のバスケットボールを使った舞台だったと聞いていて、今回の舞台はどうなるんだろう、と期待が高まる。

 球技を扱ったマンガ・アニメ作品の舞台化は、古くは『巨人の星』などがあるが、最も難しいのが球の扱いだろう。実際、『巨人の星』の舞台では、野球の球の演出がかなり難しかったという。そうした困難を乗り越えて、球を光のピンスポットで表現して成功した『テニミュ』は画期的だった。しかし、それはテニスボールという手のひらに乗るくらいの小さいサイズだったからできた演出で、人の頭ほどもあるバスケットボールでは、そうはいかないだろう。同じバスケットボールを扱ったマンガ・アニメ原作舞台である、舞台『黒子のバスケ』シリーズ(2016〜19年)では、「ボールが見えなくなる」「パスがいつのまにか通っている」などの物語上の設定もあって、実際のボールをもったり、もたなかったり、という舞台上の演出が、物語をうまく表現していた。

【ここからはネタバレ含みますので、ご注意ください】

 しかし、今回そうしたウルトラQが物語には出てこない『DEAR BOYS』では、そのあたりどうなるかと気になった。観てみると、やはり実際のボールを使っていて、パスやシュートも行うというものだった。ドリブルはさすがにずっとはできないので、バスケのボールにゴムのようなものをつけ、手に固定させるという演出。それでも、「ダンス」が、何人もの敵のガードを突破していく様子を表現していて、違和感はなかった。「そうか、バスケはダンスなんだ!」。確かに、フェイントやパス、ドリブル、シュートなど、緩急織り交ぜる動きはダンスのそれに近い。

 シアターミクサは、舞台と客席がとても近い。それだからか、キャストのみなさんはマイクをつけずに(舞台上にマイクらしきものがあり、声を拾っていたよう)、思い切り舞台上を駆け回っていた。筆者も元バスケ部なので、「あ、このシュートは入るな」、「落ちるな」、など、ダンスとバスケの両方を楽しみながら鑑賞できた。Six Men(ストリートバスケの人たち)のダンスも素晴らしかった。

 この舞台は3年前に上演予定だったそうで、コロナの影響で延期されて今やっと上演がかなったという。キャストの変更もありつつも、スタッフやキャストのみなさん全員の気持ちが伝わる、良い舞台だった。上演後に行われたボーリングゲームも面白く、何よりキャストたちの仲の良さがなんとも心地よかった。

ーーーー以下、鑑賞した学生さんの感想ですーーーーーーーーーー

劇場がもともと映画館であるためか、映像が多⽤されていて吊り物による転換がないこと、また完全
暗転ができないためなのか、シーンが変わるたびに客席側に照明を当てることによって⽬眩しを⾏い、その間に転換を⾏なっていることが印象的だった。その劇場の特性を活かした演出を⾏なっていることを実感し、違う劇場でもこの作品を⾒てみたいと思った。
 また先⽇の授業で学んだ OP や ED がわかりやすく存在しており、原作がアニメ、漫画であることを強
く感じた。またアニメを⾒ているときに感じるのと同じような物語が始まるワクワク感や OP を⾒るこ
とによって作品に引き込まれることを体感した。
 観劇後に DREA BOYS について調べてみると、過去にミュージカルをやっていたことや、原作では⼥
性キャラクターが存在しており、恋愛が重要な要素として存在していることを知った。今回観た DEAR
BOYS は 2.5 次元作品の特徴の⼀つである⼥性の存在を無いこととしているがストーリーとして話が成
り⽴っていたことに驚いた。また同時に 2.5 次元作品は原作に忠実であるものだと思っていたため、それでもちゃんとお客さんに受け⼊れられていることがすごいと思った。それは⼥性のお客さんが多いためなのか、舞台はまた別物であるとお客さんが思っているのかわからなかったが⼥性が存在している過去に⾏っていたミュージカルや原作の漫画やアニメを⾒てみたいと思った。
 また上演時間も短く、もう⼀度⾒たい、まだこの作品の世界観に浸っていたいという観劇後の余韻がとてもあった。周囲のお客さんも夜公演も⾒たいなやまた⾒に来ようかなという声が多く⽿に⼊った。
アグレッシブダンスステージとあるが、ダンスとバスケットボールの親和性の⾼さや 2.5次元舞台と
映像の親和性の⾼さを改めて感じられた。そして限られた空間や劇場の特性が上⼿に⽣かされているこ
とが本当にすごいと思った。授業を受ける前後では 2.5次元舞台を⾒たときに⾒えてくるものが変わり
前よりも多くの物が⾒えるようになった気がする。(3年Mさん)


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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