学生からの感想、第3弾です。
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(大学院2年 Hさん)
現実には存在しない魔法や、現実ではありえないほどの馬鹿力を舞台上で表現する。突拍子もないフィクションの設定を「舞台」という3次元の世界に召喚した時に、どうなってしまうのだろうか。人生初の2.5次元舞台観賞、私はそんなワクワク・ソワソワした気持ちで会場に足を運びました。
開演。煌びやかな舞台セットを背景に、魔法学校の生徒たちによる歌とダンスで一気にミュージカルの世界に引き込まれました。これは「舞台」。目の前で歌を歌いダンスを踊っているのは間違いなく生身の人間なのに、「『マッシュル』のみんなが動いている!」と感じたのがとても不思議な感覚でした。
「こんなのあり!?」と最初に心を掴まれたのは、主人公マッシュとその父親による漫才です。この「漫才」とは、「面白さの比喩」などではありません。実際に存在する某お笑いレースの名前が引き合いに出されながら、「どうもぉ〜〜」と息をピタリと合わせた漫才が本当に始まったのです。正直この演出には度肝を抜かれました。客席のあちこちでクスクスと笑う声が上がり、その笑い声を聞きながら私も一緒に笑ってしまいました。
物語も佳境に入り、敵対組織「七魔牙(マギア・ルプス)」のメンバーとマッシュたちの戦闘シーン。舞台上のセットがくるくると回転し、それぞれ別の場所にて同時多発的に発生しているはずの三組の戦闘が、舞台上の一つの絵の中に収められていたのは圧巻でした。さらに、マッシュにフォーカスを当てた戦闘シーンでは、マッシュの魔法という名の馬鹿力(?)が5人の黒子たちによって表現されていました。黒子とは本来であれば舞台の裏方に徹する存在のはずです。しかし、頭にシュークリームを乗せた黒子たちは、迫力満点の音楽に合わせたキレキレのダンスでその圧倒的な力を文字通り体現し、あたかも主人公(実際、主人公の一部ではあるが)のようでした。
魔法を使用したアクションでは、杖の先につけられたライトの点滅によって魔法の発動や魔法が無効化されたことがわかるように工夫されていました。魔法発動と同時に舞台袖から軽快なステップを踏みながら出現する黒子たち。背景に投影された映像や爆音の効果音とのマッチによる魔法の表現は2.5次元ならではのものだと思います。たった一回の魔法攻撃を観るのにも情報量が多いため、目と耳をフル活動させる必要があり見応えばっちりでした。
また、私は終始ニヤニヤしながら観賞していたような気がします。それほど、この舞台にはコメディー要素が散りばめられており(これは『マッシュル』にとってはかなり重要だと思う)、3時間(途中休憩あり)の観賞時間はニヤニヤしているうちにあっという間に終わってしまいました。
終演。物語が終わり、あらためて舞台袖から出てきたキャラクターたちと一緒に振り付けを覚え、客席から一緒に踊りました。キャラクターたちは、今まさにこの瞬間私の目の前でパフォーマンスをしており、そこに私がゲリラ的に参加している、その感覚がたまらなく良かったです。先述した通り、私は今回が初めての舞台観賞でしたが、一つの舞台作品に対して何度も足を運んでしまう「2.5次元舞台オタク」たちの気持ちが分かった気がします。舞台特有の「一回性」に病みつきになりそうです。最高でした。