舞台鑑賞自体初めて、というぽぷすた1年生の矢吹涼さんの鑑賞記です。
2015 年11 月16 日、「ミュージカル リボンの騎士」を鑑賞してきました。実は私にとって、この日は初のミュージカル、しかも初の2.5 次元ミュージカルでした。
赤坂ACT シアターに着いたときから、今日体験することに対する期待で胸が躍っていました。東京メトロの赤坂駅を抜けるとすぐに目に飛び込んでくる、大きなリボンの騎士のポスターを、周りにいる皆と同じように、スマホで写真を撮ってしまいました。周りの人々は自分と同じように、2.5 次元ミュージカルが初めて、と見受けられる方々が多く、少なくとも毎回足しげく鑑賞しているというような方は少なそうでした。それは、今回メインで出演しているのが、乃木坂46 の生田絵梨花さん、桜井玲香さんであったことが深く関係していたかと思われます。平日のお昼間なのに、若い女性たちや髪を金色に染めたホスト風の男性まで、乃木坂のファンであろう人々が多く見受けられ、自分のような学生の世代の存在が浮くようなことはありませんでした。
リボンの騎士、という様々な形で展開されてきたこの作品に対して、私が知っていたのは作品名くらいで、詳しいストーリーは何も知らないままこの日の公演に飛び込みました。しかし、予備知識のない私にとってもストーリー展開につまずくことはなく、難なくリボンの騎士の世界に入り込むことができました。くすっと思わず笑ってしまうシーンもあれば、主人公の力強いセリフに胸が熱くなることも。初めて見る2.5 次元ミュージカルがこの作品でよかったと思えるくらい十分に楽しむことができました。主人公サファイアは王位継承のために、女性の体をもっていながら男性として育てられます。男性の心も女性の心もどちらも持って生まれてきた彼女は、それを完璧にできてしまったのです。自身の特異過ぎる状況に苦悩しながらも、最後には2 つの心を持ったまま、自分の大切なものを守って生きていくと決意します。また、ヘケートも、サファイアから女の心を奪おうとする魔女の母親に対して「私は私。他の人の心なんてもらいたくない」と強い意志をもって母親を拒みます。「女性の自立」という現代的テーマが浮き上がりました。
加えて、サファイアたちを苦しめた黒幕のナイロン卿に罰を与えるとき、サファイアはこう言います。「あなたが最も嫌うメスの家畜となれ」そうしてナイロン卿は天使の魔法により、豚になってしまうのです。このセリフにもジェンダー的要素を垣間見ることができますよね。それに、サファイアの複雑な設定自体には、今その存在が世の中に認知されてきているLGBT を連想させられました。調べてみると、最初に「リボンの騎士」という作品が発表されたのは、1953 年のことでした。約60 年以上も前に、私たちが生きる今に通ずる社会的テーマをもって「リボンの騎
士」を生み出した手塚治虫の凄さにも驚かされるきっかけになりました。 (1 年 矢吹涼)