学生の感想、第4弾です。
6. 都市科学部 都市社会共生学科 2年 山下恵次郎
私は高校時代、演劇部に所属しており、今も劇団に所属して細々と活動している。「演劇部って何するの?ロミオとジュリエットとか?」大学に入って、何度この質問をされたことか。一回も演劇をやったことがないし、一回も見たこともない。シェイクスピアの戯曲であり、ロミオとジュリエットの叶わぬ恋を描いた作品、ということは一般常識として知っている。ただ、それだけだ。「名作」といわれても、古い戯曲ゆえの古い言い回し、遠い国の舞台設定、オペラ・・・ストレートな芝居が好みの自分としては正直なところそれほど興味はなかった。そのため、今回「観たい!!!!っていうわけではないけど、まあ誘われたから・・・」くらいのテンションだった。しかし、終演後、私は感動と興奮によってしばらく言葉が出なかった。
一歩劇場に足を踏み入れた瞬間に、私の中の浅はかな「ロミオとジュリエット」の世界観はぶち壊され、そこはもう異世界だった。パイプが張り巡らされたメカ的で、アウトローな雰囲気の舞台セット、開演前に私達を文字通り鼓舞する俳優陣、鼓膜が破れるほどの音量で会場と私達の心を揺らす激しい音楽。開演前から「R&J」の世界観に引きずり込まれ、圧倒された。
そして、開演。正直、どのシーンが、とかそういう次元ではなく、すべのシーンに圧倒され続けた。アクロバットとともに歌われる軽快でロックな歌、役者一人一人の生き生きとした演技、さまざまな表情を見せる舞台セット。かっこよさと笑いと感動が全て盛り込まれ、あれほどまでに「あっという間」な時間を味わったのはいつぶりだっただろうか。
「R&J」はいい意味で私の中の「ミュージカル」の概念を裏切ってきた。ロミオとジュリエットという誰もが知っている題材を用いて、軽快で力強い歌とともに私の中に「ロックオペラ」という新たなジャンルを確立してくれた。もう一度観たいと心から思う。調べてみると、DVD化され、発売されるそうだ。もう一度、いや何度でも観たいと思う。貴重な時間と経験を本当にありがとうございました。
7. 教育人間科学部 人間文化課程 4年
ロックオペラ『R&J』を観劇した。ロミオとジュリエットは様々な場所で演じられてきた題材で、今では舞台だけでなくアニメやゲームでも自由に解釈されその名を使われている。そんな中、R&Jは近未来に時間軸を設定し、ロックオペラを組み込んだ新たな試みのロミオとジュリエットだ。そのような前知識を得て、近未来という舞台設定とロックでハードなR&Jのキービジュアルに私は期待を膨らませながら舞台鑑賞に臨んだ。
場面の切り替え時や登場人物の感情が高ぶったシーンでは基本的に歌で表現されており、構成としてはミュージカルに近く、休憩なしの2時間10分でも全く飽きずに集中して観ることができた。登場人物それぞれキャラが立っており、舞台上の人間が本当にそこで生活しているかのような実存感も感じた。役者の方々は演技だけでなく、歌やダンス、アクロバティックどこを取っても素晴らしかった。アドリブでの観客との絡みも所々であり、観客を楽しませようという気配りが感じられたし、これが役者なのだなと感じた。
ただ、上記のように良かった点が多かった半面物足りない部分もあった。「R&J」はロックを取り入れて斬新さはあったものの、物語の大筋から枠を踏み出しきれないもどかしさを感じた。まず、舞台の時間軸を近未来に設定していた割には全く近未来感がない。確かにセリフでAIが単純労働を奪ったことや監視カメラの存在など説明されていたがそれらが実際舞台上に現れることはない。それに、乳母という存在自体古く、近未来に適応していない。今時母乳が出なければ代わりに乳母ではなく粉ミルクである。せめてヘレナを乳母でなくアンドロイドメイドぐらい改変してしまえば近未来感が増したかもしれない。この他にも、あるべき場所に監視カメラがなかったり、前時代的な抗争が舞台上で行われていたりすると違和感が多く、なんのために近未来設定にしたのか全く分からない。これらの時代錯誤感が舞台の真実味を失わせてしまい、非常に残念に思った。
元々あった作品に手を加えることは簡単なことでない。今回の「R&J」も大筋の物語は変わらず、細かい部分で改変が加えられていた。きっと「R&J」は原作を尊重した上で出来上がった作品なのだろう。しかし、せっかく作った設定を全うしなければ舞台上の世界は作り物でしかなくなる。作り物を作り物として見せるのでなく作り物だとしてもその場でしっかり存在しているものとして見せてほしい。「R&J」はまだまだ作りこめそうな作品だと思うし、今後の展開が楽しみだと感じた。