学生の感想第5弾です。
8. 都市科学部都市社会共⽣学科 2年 岩村育美
私はこのようなオペラを鑑賞するのは初めての経験だったので、新鮮なシーンがたくさんあってとても魅⼒的な時間でした。ロミオとジュリエットの話⾃体はぼんやりと知っていて、結末も知っていたので、ストーリーの流れは⼤体はじめの⽅で掴めたかなと思っていたのですが、友⼈の復讐として警官を殺してしまったロミオや、仮死状態から⽣きかえるという設定からは近未来⾵のアレンジが聞いていて、オリジナルのロミジュリとはまた違う雰囲気を味わうことができました。
私が最も印象に残っているシーンは、ロミオがヘレナの⼿助けで警官の⽬をかいくぐってジュリエットに会いに来て、⼆⼈で夜を過ごすシーンです。別れ際の「あの朝⽇の光が⼆⼈を引き裂く」というセリフには⼆⼈の離れたくないという強い気持ちが現れていて、とても感情移⼊しました。また急かすヘレナを前に仕⽅なく離れる⼆⼈とその表情に切ない気持ちになりました。舞台のセットも作り込まれていて、三本の⼤きな柱を基盤に⼆階部分と⼀階部分に分かれているのですが、中央の柱は回転式になっていて、⼆⼈の逢瀬のシーンではゆっくりと三回転ほどしていて、現実感から離れて⼆⼈だけの世界に⼊り込んでいる感じが静かなオルゴールの⾳響ともマッチしてよく表現されていました。それだけでなくセットは場⾯によって回転する⾓度が変えられていて、三⼗度ほど動いただけで舞台の雰囲気が全然違うように⾒せることに成功していたり、ロミオの仲間がたむろっている場⾯の時はセットのスプレーで落書きされた側⾯を利⽤していたり、セットを回している間に回っているセットの間をキャストが駆け抜けていくなど、セット⾃体は回転するという動きだけなのに、場⾯によっていくつもの顔を持っていて、それがオペラに躍動感を⾜していました。またキャストの歌唱⼒も素晴らしかったです。
私はアカペラのサークルに所属しているのですが、ヘレナと⽩い服を着た⼥性四⼈がハモっていたシーンが印象的でとても華やかでヘレナを中⼼にハキハキとした印象を観客に与え、舞台にアクセントを加えていていました。呼吸がぴったりシンクロしていて、プロだなという⾵に感じました。ロミオとジュリエットの最初のデュエットはすごく陽気でアップテンポなリズムにこちらもワクワクしていました。でも中盤のバラバラにされた⼆⼈のデュエットは雰囲気が最初とは全く違っていて同じ⼆⼈でもこんなにも違うのかと驚いたし、後の⽅のデュエットはロミオの声が⽢くて美味しくて思わず聴き⼊ってしまいました。原作とは違うラストになるのかなとも少し思っていましたが、やはり⼆⼈とも死んでしまうという結末には悲しくやるせない気持ちになりましたが、どちらかが⽣き残ってしまう結末だとやはりふわっとしてしまって、ロミオとジュリエットは完結しないのかなというような感想を持って⾒終えました。最後のオールキャストの舞台はすごく楽しくて、⾳楽が終わってからもずっと頭の中で流れていて、帰りながら友達と歌ってしまいました。とても個性的お芝居で、思っていた何倍も楽しかったです。
9. 都市科学部都市社会共生学科 2年 村山達哉
私自身、本格的な舞台を観劇したことは片手で数えられるくらいしかなく、しかも今回観劇した作品のベースとなっている「ロミオとジュリエット」は観たことがなかったため、非常に新鮮な気分で作品に入ることができた。前半は大音量で流れるロック調の音楽に驚き、古くから上演されている演目の中にあるとは思えない現代的なジョーク、ギャグなどでいい意味で「ロミオとジュリエット」を見ているとは思えない、全く新しい作品を見ているかのような感覚を味わった。日本に初めてこの作品がもたらされた時の言い回しなども紹介されていて、長い時代にわたって多くの人が親しんできたこと、また時代によって大きく雰囲気が変化してきたことがよく分かった。一方演目が進んでいくにつれて、観たことがない人でも「ちゃんとした(原作に忠実な)」「ロミオとジュリエット」の世界に引き込まれていき、前後半のギャップと巧みな構成の虜となった。観劇前は2時間という上演時間が長く感じるかと思っていたが、実際はそんなことは感じず、むしろもっと長くこの世界に浸っていたいと思うくらいであった。
特にすごさを感じた点の一つ目は舞台セットのつくられ方である。前半の語りで「場所は不明」といっていたことも影響しているのかもしれないが、特定の場所を想像させるイラストや彩色の用いられない、無機質な黒基調のセットと特に派手さのない階段を初めて見たときは、途中で大転換でもするのか、と思った。しかし話が進むにつれて自分が物語、舞台に引き込まれていったこともあり、少し角度を変えるだけでそれが娘の部屋に見えたり、教会の中に見えたり、宮殿の大階段のように見え、演出の技術の素晴らしさに感動した。
二点目は言わずもがな演者の方々の演技と歌声である。広い舞台の中で、遠くの客席の人にも伝わるような大きくも繊細な動きはさすが各方面で活躍するスターの集まりだと感じた。特に陣内孝則さんの出てきてからの他を圧倒するようなオーラと、それでも「陣内さん」ではなく「ロレンス神父」に見える演技力に惹きこまれた。また、ロックというだけあって劇中に出てくる歌の多くに叫ぶような激しい歌い方が含まれていたが、それでも声をからすことなく繊細な演技や歌もそう感じさせるようにしているところにプロのすごさを感じた。
高校時代に文化祭でクラス演劇に取り組んだ時から演劇自体には今までよりも強い関心を抱いていたが、自分から進んで観劇をする機会はなかった。しかし、今回のように今まで自分があまり積極的な興味を示さなかったものの中にも心を動かされたり、いい経験を味わうことができることを実感できた。これから先の生活でも、少し今までとは違う分野に目を向けてみようかと思う、そんなきっかけを与えてくれた観劇でした。ありがとうございました。