2023年12月12日
[観劇報告] 舞台『鬼滅の刃』其の肆「遊郭潜入」2
2.5次元ミュージカル・ライブシアター

大学院1年生 女性 F・H

 「漫画やアニメの物語が画像・映像ではなく、目の前に実現している!」。そのような思いがきっかけに、アニメ・マンガを題材にした舞台を見始め、好きになりました。これまでは主にスポーツマンガを題材にした舞台を視聴していますが、今回はそれ以外のジャンルの作品を見る機会をいただきました。さらに、今回は好きな作品である『鬼滅の刃』の舞台なので、そのマンガとアニメも視聴しており、舞台のほうはどのような新たな視聴経験を与えてくれるかとドキドキの気持ちで劇場に行きました。

 席に着いた後、ステージのセット、音楽、室内を充満した霧のようなものによって、私はもはや物語の世界に引き込まれました。今回の遊郭編は原作でも印象に残った物語で、コメディー、ドラマ、サスペンス、アクションの要素が含まれており、「舞台のほうはうまく表現できるのか?」という心配がありました。しかし、公演が始まった瞬間にその心配は消えました。俳優、舞台セット、衣装、踊り、歌、視覚効果、照明などが精密に作られ、すべてが美しくシンクロして、非常に没入感のあるパフォーマンスを生み出しました。興味深いのは、パフォーマンスのいくつかところにオノマトペの言葉が効果音と同時に使用されることです。そして、キャラクターの視点、能力(特に墜姫の帯の血鬼術)、回想等を表わす背景の映像の使用も想像外だった。これらの使用は、マンガ、アニメ、現実の世界を混ざり合わせ、まさに2.5次元の世界にいるような感じがします。

 ついに、待ちに待った鬼対鬼狩り、そして墜姫と妓夫太郎の回想シーンが来た。闘いのシーンは、アニメとマンガでも見られるように、血まみれでグロテスクな場面が多い。しかし、今回の舞台はそのような激しい場面を違和感なく再現することができました。そして、墜姫と妓夫太郎の回想シーンは、同時に大人と子供の墜姫と妓夫太郎が登場していることによって、単なるの回想シーンではなくなり、過去と現在の境界線があいまいにしている場面でもある。さらに、俳優の演技はもちろん、挿入された歌によってアニメやマンガでは味わえない緊張感と切なさを感じました。これらの仕組みはステージに立ったキャラクターの気持ちが伝われただけではなく、キャラクターにより感情移入ができるようになり、期待通り新たな視聴経験を与えてくれました。

 今回の舞台『鬼滅の刃』其の肆「遊郭潜入」は最後まで自分の感覚を2.5次元の世界に留まらせることができ、すでに3時間が経ったことにさえ気づかないほど、素晴らしい公演でした。終演に、俳優たちが観客に挨拶するためにステージに上がったとき、その時ようやく自分の現実の世界に戻ったような気がしました。次の舞台はどのように原作の物語を再現するのか、どのような新たな経験や驚きを与えてくれるのかを楽しみにしています。

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学部2年生 女性 K・S

 アニメでは鬼となった妓夫太郎が過去を振り返るという演出でしたが、舞台では幼い妓夫太郎と鬼となった妓夫太郎が共に存在していて“2人”の声が重なる演出がとても印象的でした。交わることのない過去と現在が舞台上で交差する…こんなの泣くしかないじゃないですか…!さらに、最後、堕姫が妓夫太郎に駆け寄るシーンで、アニメでは感動する音楽が流れていましたが、舞台では沈黙の中で役者さんたちの声だけが響き渡る演出になっていたのも印象深かったです。役者さんが織りなす空間と声だけで勝負していて、より2人の思いが浮き彫りなる…これも泣くしかないじゃないですか…!アニメを見る度に泣き、映画館でも泣き、舞台を見た今日も泣く。私はいったいこの2人の過去に何回泣けばいいんですか!!!と声を大にして言いたくなりました。もともと私は、アニメなどの原作がある作品を舞台にする必要性をあまり感じていなかったのですが、今日を機にその考え方は一変しました。キャラクターがそこに確かに生きている。そして舞台ならではの演出に心が動かされる。私はもうすっかり2.5次元作品の虜になってしまいました。

 今回、私が個人的に注目していたのが遊郭の女性たちでした。私は日本舞踊をやっていて、衣装や作法に興味があったので、花魁道中の時の歩き方や最後のお辞儀の仕方、裾引きで踊るシーン、役者さんたちの表情などを見ているのはとても楽しく、どんな時も役者さんが美しく上品に魅せていて、圧倒されました。舞台と日本舞踊は別物かもしれないけど、「表現者」としては共通しているので、烏滸がましいことですが親近感が湧いたし大変勉強になりました。衣装はどれくらい重いのか、メイクはどうやってしているのか、なんでこの柄の衣装にしたのかなど、舞台の裏方の方にも興味を持ちました。

 最近、刀剣乱舞から2.5次元にハマり、実際に劇場に行って舞台を鑑賞するのは今日が初めてでした。そのため2.5次元についての知識はまだまだ浅いですが、私は舞台が終わった後に役者さんたちがSNSなどで出してくれるオフショットを見るまでが1つの舞台だと思って楽しんでいます。今回もしっかりチェックしました。役者さんたちが写真をアップしてくれることで今日はこの人たちに会えたという確信が持て、改めて今日の感動を味わうことができます。また、アニメや舞台ではキャラクター同士の絡みがなくても一緒に写真を撮ってくれたり、中の人同士の交友関係がわかったりでき、このキャラ同士の絡みを見てみたかったんだ!2人の仲の良さが息のあった殺陣に繋がっているのかな!といろいろ思考を巡らせることができ、オフショットでしか摂取できない栄養があります。この点も2.5次元の魅力なのではないかと考えています。今後もさまざまな2.5次元作品に注目して、2.5次元の魅力について考えていきたいと思います。


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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