2025年1月31日
[観劇報告] 舞台 主役の椅子はオレの椅子2 菌活戦隊「キノッコーズ」
2.5次元ミュージカル・ライブシアター

先日、品川プリンスホテルクラブexで、主役の椅子はオレの椅子2プロジェクトで、舞台「菌活戦隊「キノッコーズ」」をゼミの学生と鑑賞してきました。 マンガ、アニメ、ゲームを原作、原案とする2.5次元舞台ですが、今後その2.5次元舞台のスターを育成するプロジェクトということで、今後活躍するであろう俳優さんたちの舞台という位置づけです。

 お話は、スーパー戦隊「菌活戦隊キノッコーズ」という番組で一大ブームとなった役者たちが、その後ブームが去り、今やスーパーなどできのこの販促として、戦隊ショーをやっている、という設定。戦隊もので育った富豪の家の子ども(幸成くん)は実際にキノッコーズがいて、父の死後に相続争いに巻き込まれた自分を助けに来てくれると信じている。幸成の執事の依頼で、本当にキノッコーズとして幸成くんを守るバイトをする彼らが、「ヒーローとは何か」「自分が本当にやりたいことは何か」ということを問いつつ、活躍するという物語です。

 若手の俳優さんたちが、俳優を演じるというメタ構造もあり、難しい役どころだったと思いますが、フレッシュにエネルギッシュに演じていらっしゃいました。今後彼らがどのような役に出会うのか、楽しみです。

 以下、学生の感想です。

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これまでに、アニメやマンガ、ゲームを題材にした様々な2.5次元舞台を観てきましたが、「戦隊」をテーマにした舞台は今回が初めてでした。その好奇心から、この公演を楽しみにしていました。

 物語が始まるとすぐに、体の健康を守るために、コレステロールのような「悪者」と戦うというヒーローのコンセプトがとてもユニークだと感じました。また、この物語は普通の戦隊ヒーローではなく、かつて名声を失い、生活を立て直そうとする地元の役者たちを描いている点が共感を呼びました。超人的な力を持っていなくても、限られた力でヒーローとしての姿を体現し、彼らが本物のヒーローだと信じている少年を助ける姿に感動を覚えました。さらに、典型的な戦隊物とは異なり、最初から悪役が明かされるわけではなく、物語が進むにつれて本当の悪役が明らかになっていくという点が特に魅力的でした。

 ユーモアと深刻さのバランスも印象的でした。コメディのタイミングが絶妙で、観客を楽しませてくれる軽快な瞬間がありました。しかし、物語がシリアスになると、役者たちは緊張感を高めるのが上手で、ムードの変化が自然で物語にさらなる深みを与えたと感じました。

 役者と観客のインタラクションも非常に印象に残りました。観客を積極的に公演に巻き込もうとし、観客は物語の一部として参加することができました。このインタラクションが、物語を単なる鑑賞から一緒に体験するものへと変え、舞台がより没入感のあるものにしていたと感じました。

 舞台自体はそれほど大きくはありませんでしたが、それがかえって良かったと思います。狭い空間で観客とキャラクターとの距離が近くなり、より親密に感じることができました。また、スクリーン投影を駆使して他のキャラクターを創造的に紹介していた点も印象的でした。この工夫により、視覚的に魅力的でダイナミックな印象を与え、物語の世界観を広げるだけでなく、舞台が混雑することなくキャラクターをうまく紹介する手段となっていたと思います。

 最後に、キャストに特に感銘を受けました。この舞台にはほとんどが新人の役者たちが出演しており、初めて舞台に立ったと聞いていました。それにもかかわらず、彼らは素晴らしい演技を披露してくれました。彼らの情熱は明らかで、キャラクターを生き生きと表現し、観客を引き込む力強さを感じました。

 この公演を通じて、2.5次元舞台は必ずしもアニメやマンガ、ゲームに基づく必要はないことを再認識しました。この新しい形態の舞台が今後どのように進化していくのか、非常に楽しみです。


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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