先日、ゼミの学生と「ミュージカル黒執事~緑の魔女と人狼の森」を、東京ドームシティホール改め、Kanadevia Hallに観に行きました。観客のみなさんは、緑のグッズやスカーフ、服をまとい、準備万端。ゴシックロリータ風の服で来ている方々も多く見受けられました。若い男性、年配の方もちらほら。「生執事」ファンは層が厚い。
今回は、シエル役、緑の魔女ことサリバン役は、両方とも中学生。生意気だけど愛らしいシエルを小林郁大くん、こちらもツンデレキャラのサリバンを、Claraさんが熱演。執事同士の対決も見もの。セバスチャン役にはいつもの立石俊樹さん、そしてサリバンのボディガード(お目付け役)ヴォルフラム役を小野田龍之介さん。なにこれ、グランドミュージカル?と思うほどの迫力の歌唱力と細かい演技。オケピがないのが残念なくらいでした。
カーテンコール後(3回目はスタンディングオベーション)に、立石さんがおとぼけコメントをしたのが、なんともギャップ萌えでした。愛すべきセバスチャン。公演数が少ないのが残念でしたが、演出が毛利亘宏さん、音楽が和田俊輔さんのタッグとなれば、見逃せないですよ。
以下は、学生の感想です。
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横浜国立大学都市科学部都市社会共生学科4年・N.Nさん
実は私が「黒執事」という作品に出会ったきっかけは、友人の勧めで観たミュージカル黒執事の配信でした。初めてミュージカル黒執事を観た時にそのクオリティやストーリー、登場人物の魅力に衝撃を受け、それから原作やアニメを追うようになりました。そんな思い入れのあるミュージカル黒執事を今回初めて劇場で観劇させていただきました。
何よりも印象に残ったのはキャストの皆さんの圧倒的な歌唱とダンスでした。どの曲も一度しか観劇していないにも関わらず終演後もメロディを口ずさめてしまうくらい一曲一曲のインパクトがありました。
特に印象深いのは、シエルの部屋にやってきた緑の魔女ことサリヴァンが歌う歌です。彼女の知識欲はある時にはコミカルにある時はシリアスに描かれますが、あの場面では彼女の純粋な好奇心が自由への憧れと一緒に歌に表れていて、キャストのClaraさんの素晴らしい歌声も相まってとても印象に残りました。終盤に彼女がシエルの手を取って再び立ち上がる場面の感動を一層強めていたように思います。
セバスチャンとヴォルフラムが食事の支度をする場面が歌のパートになったのは意外でしたが、対照的な二人の執事の掛け合いを通じてヴォルフラムという人物に早い時点からスポットが当たっており、彼の過去や現在の葛藤と選択が今回の物語の重要な軸の一つであることを感じました。
また、シリーズ5作目である「Tango on the Campania」の楽曲が再び使用された場面では「生執事」が、ファンや関係者の方々に長く愛され受け継がれてきたことを感じてとても感慨深かったです。ミュージカル作品において歌が表現するものの豊かさを改めて感じました。
呪いの正体が毒ガスだったと判明し、おとぎ話のような魔法や中世風の村のイメージが崩れ、もはや第一次世界大戦期すら連想させる化学や兵器工場が姿を現す絶望的なシーンは、展開を知っていてもとてもワクワクしました。本作のダークな世界観を作っているのが実は悪魔や魔女ではなく人間だったというところがユニークで黒執事らしいと感じました。
漫画やアニメと異なり舞台には背景や大道具、アクション、上演時間など様々な制約があり、シリーズの中でも本作は特に舞台上での表現が難しい箇所が多くあったのではないかと思います。ですが物語の軸になる部分を抽出しながら整理すれば、お芝居や音楽、映像、照明などの表現を通じて物語を2.5次元ミュージカルとして再構築できるのだということを実感しました。原作の再現に留まらず、唯一無二でありながら確かに「黒執事を観た」という満足感がある作品でした。
素晴らしい舞台をありがとうございました。また次の生執事を拝見できるのを楽しみにしています。