2015年9月10日
2.5次元ミュージカル『帝一の國2』 鑑賞レポート2
2.5次元ミュージカル・ライブシアター

ぽぷぜみの清水桃香さんが、『帝一の國2』の鑑賞レポートを寄せてくれました。

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最近、立て続けに行われる実写化に少々抵抗を感じる中、個人的に2.5次元ミュージカルにも当初はあまり良い印象はなかった。そんな私が初めて日本のミュージカルに出向いた。それが『帝一の國』であった。

今回は2章目ということもあり、開演してすぐに1章のあらすじを、オールラウンダ―ズの俳優陣が分かりやすく説明をしていた。まず私が感動したのが、そのオールラウンダ―ズたちである。オールラウンダーズとは複数の役を1人が行うことであり、彼らは場面が変わるごとに衣装だけでなく、口調やキャラクターも変えて何度も別人になって登場を繰り返していた。そのクオリティーの高さと、エキストラがたくさん居る様に錯覚を起こさせることなど、視覚的にも驚きの連続であった。

メインの俳優陣も曲に合わせて踊るシーンでは、自身のキャラクターを崩さず、バラバラで個性を出しつつ、綺麗に統一されたダンスと歌を披露した。例えば森國役の大河元気は役柄、真面目で眼鏡から知的な印象を与えるキャラであるため、真顔で大げさな動きと小さな動きを上手く分け、我々の視覚的イメージを崩さないように踊っていた。内容もギャグとシリアスの相反する要素を上手に取り入れ、始終あきずに鑑賞することができた。

最後に、この『帝一の國』の続編をやるということで、その宣伝をパフォーマンス中の歌詞に混ぜ込んでいたことにとても驚いた。本来、『帝一の國』というフィクションのストーリーが舞台上で繰り広げられている場所で、この様に演技を超えた、日常的な現実世界に引き戻させる様な行為を盛り込んでくるのはイレギュラーだ。しかし、それを観て世界観を壊すことや不快だと感じることはなかった。むしろ、「また次も観に行きたい」と強く思うことが出来た。今回のミュージカルは2次元的で作り話のようであると同時に、少し現実味を上手く取り入れた、絶妙なバランスを維持したとても素晴らしい出来だった。原作があるものを実写する意図も少し理解することが出来た気がした。


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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