2015年11月18日
2.5次元ミュージカル鑑賞記「ミュージカルリボンの騎士」1
お知らせ
2.5次元ミュージカル鑑賞記「ミュージカルリボンの騎士」1

先日赤坂ACTシアターにて、ぽぷすた有志+αで、「ミュージカルリボンの騎士」を観てきました。平日というのに、当日券を求める人の列が長く、人気ぶりがうかがえます。それもそのはず、主演は乃木坂46の生田さん、ブラッド役には、「仮面ライダー鎧武/ガイム」の戦極凌馬役の青木玄徳(つねのり)さんなど、いろいろなところでファンが食いつく仕掛けがあるキャスティングです。

筆者にとっては、サファイヤの人生よりも、原作にはないヘケート(桜井玲香)とその母役(魔法でヘケートを生み出した魔女役)のヘル夫人のサイドストーリーが興味深かったです。サファイアは男、女どちらで生きるべきか、自分は肉体的には女なのに、と性同一性の齟齬を否定しますが、ヘケートは「私は私。人生を決めるのは、私でお母様ではない」と、サファイアの女の心を取り出して、ヘケートに与えようと禁忌の魔法を犯す母を否定するのです。

これって、フェミニズムですよね。しかも、ジェンダー平等時代の、「自分らしく」というのを体現している人物です。しかし、ヘケートもヘルも、魔力を失って、消滅します。かたや、女と男の両方の心で生きて行く、と決めたものの、結局は安定した就職先であるフランツ王子と結婚。しかし、夫婦共働きの別居婚にする、という今風の最後で終わります。

なるほど、サファイアは、ポストフェミニズム時代の「I want ALL」なのですね。ジェンダーを考える上でもよいテキストになると思います。歌唱力は、ヘル夫人のはいだしょうこ(さすが元宝塚)、そしてサファイア役の生田絵梨花、ナイロン卿役の根本正勝が抜群でした。

以下、ぽぷすた学生の感想です。
*********************************************2015/11/17
 2015年11月ミュージカル『リボンの騎士』の昼公演を観劇しました。2.5次元ミュージカルは今までテニミュ・セラミュ・SAMRAI 7を見てきて、今回が4回目でした。リボンの騎士は、他のどの作品よりも客の男女比や年齢層に偏りがない印象を受けました。見に行く前は、乃木坂46が出演していることから男性が多く集まりそうだと予想していましたが、かつてリボンの騎士という作品自体のファンだったと思われる中年~高齢の女性もたくさん見受けられました。

 公演で一番印象に残ったことは、照明の使い方です。開演前から緞帳に窓から光が差すように窓枠型に照らされており、舞台が始まる前からリボンの騎士の世界観に入りこんだ気分になりました。他にも、魂に人の心を入れる表現や、魔法を使う時にただの全暗転ではなく上手く照明を入れるところも物語に引き込まれて良かったです。また、舞台を前と後ろに区切るステンドグラスのような柄の幕が、照明の加減によって透けたり壁に見えたりするのが素敵だなと思いました。

 リボンの騎士は、授業でアニメの1話を見たのと、小さい頃に母から大まかなストーリーを聞いて知ったのみだったのですが、最初からサファイアが女の子の口調で話していることに驚きました。改めて漫画やアニメを見ると、原作からどのように設定を変えてミュージカルの脚本を作ったのかが考察でき、より深く作品を楽しめると思いました。個人的には、「心は身体の性別に囚われず、人それぞれ違う」というメッセージが、昔の作品であっても現代に通じるものがあり、過去作品を今上演するにあたって意識されたところではないかと思いました。

 ミュージカル全体を通して、常にたくさんの人が舞台上にいるというよりは、1~2人に視点を集中させている印象を受けました。モブキャラクターの登場回数もそこまで多くはなく、ひとりひとりの心の揺れ動きを描くことに力を入れたのかなと感じました。ただ、私はダンスを見るが好きなので、今回のミュージカルではあまり見れなかったことが少し残念でした。

 最後のカーテンコールでは、キャラクターに合わせた音楽が流れていたのが良かったです。そして、お見送り企画まで用意されており、一瞬でしたが間近でキャストを見ることができて嬉しかったです。私は乃木坂46について詳しくはないのですが、ファンの方々は、普段のアイドル活動と舞台で活躍する彼女達のギャップなども含めて楽しめたのではないかと思いました。(4年 巽 渓)


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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