2015年12月23日
シンポジウム報告「劇場都市渋谷」シンポジウム
2.5次元ミュージカル・ライブシアター

11月に渋谷AiiA2.5シアターにおいて、渋谷区観光局などが主催のシンポジウム「劇場都市渋谷」がありました。私も参加しましたが、確かに渋谷にはいい劇場がたくさんあり、日本のブロードウェイ、エーストエンドとなっても不思議ではありません。

詳細は、同じく参加していたぽぷすたの2年生猪島怜佳さんからの報告でどうぞ。

劇場都市渋谷シンポジウム
(1)はじめに
このシンポジウムは買い物のイメージが強い渋谷という街を、劇場都市として世界中に広めるため
のシンポジウムである。私自身、渋谷は買い物というイメージが強く、東京のガイドブックに渋谷は
ショッピングの中心として紹介されていた。そのため今回のシンポジウムで語られた内容はとても新
鮮で、『街』というものの発信の仕方を考える上でとても興味深かった。劇場の代表者によって紹介
された劇場はそれぞれ個性を持っており、年間を通して様々な公演を行っている。本レポートでは、
今回の話の中で特に興味を持った各劇場の演出と劇場都市渋谷としての在り方について述べる。
(2)各劇場の特色と演出
渋谷には「シアターオーブ」、「パルコ劇場」、「新国立劇場」、「AiiA2.5Theater」の劇場があり、そ
れぞれミュージカル・演劇・オペラ・2.5 次元ミュージカルを得意としている。その違いはステージ
の移動性から音響まで多岐にわたり、このような専門の違う劇場が一つの街にあることは特別なこと
である。様々ある劇場であるが、個々の劇場では観客を増やすために独自の企画で努力を行ってい
る。最も面白いと感じたのは、「新国立劇場」による高収入の OL をターゲットにしたドレスを着て
オペラを楽しむというものであった。「新国立劇場」で行われる公演の多くは 1 回のチケット代が比
較的高く、時間とお金のある富裕層が主な客である。そんな中で新規のお客さんを増やすための試み
としてこの企画が行われたとのこと。お金のある独身 OL を、プロの手で綺麗にし、普段は出来ない
特別な体験をすることでオペラに興味を持ってもらおうという企画である。特別な体験というものは
誰もが憧れることであり、その心情をついたこの企画は自分でも参加してみたいと思った。また、こ
の企画の面白さは、企画に参加してドレスを着たお客さんたちが空間設計の一員となっていることで
ある。オペラなどは西欧から来た優雅なものであり、ドレスを着て鑑賞する人がいれば会場内も優雅
な雰囲気になるというのである。ただ新規客に興味を持ってもらうだけでなく、空間作りにまで含ん
でしまうところに驚いたとともに、劇場は劇場内のつくりだけでなく客がその空間をつくっているの
だということを実感した。
(3)劇場都市渋谷としての渋谷
買い物という印象の強い渋谷が「劇場都市渋谷」となるためにはどうしたらよいのだろうか。ゲス
トとして佐藤流司さんが来ていたように、私は 2.5 次元ミュージカルには大きな力があると考える。
2.5 次元ミュージカルは最近大きな注目を浴びており、専用の劇場があるというのは渋谷だけであ
る。また、2.5 次元ミュージカルの俳優は様々な作品に出演していることが多く、俳優のファンも渋
谷に通うという現象も生まれる。最近注目されたものだからこそ、2.5 次元ミュージカルと言えば渋
谷というイメージを付けやすく、それによって他の劇場への認識が高まることも期待される。
元々ある渋谷のイメージを変えることは難しいが、2.5 次元ミュージカルという新たな舞台の形に
注目が集まる中で渋谷も同時に劇場都市としてのイメージを付けていくことは可能である。また、イ
メージを付けるには長期的な活動が必要だ。そのため今後も様々な舞台を渋谷で公演し、“舞台を観
るために渋谷に来る人”を増やしていくことが重要だと考える。


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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