2016年10月27日
ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」〜Amour Eternal〜鑑賞記3
2.5次元ミュージカル・ライブシアター

4年生からも感想が届きました。
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◎人数について
感想としてまず印象的だったのが、セーラー戦士を中心とした人数の多さです。前回鑑賞したときは原作アニメで言う『R』に当たるストーリーで、今回が『SS』であり、前回に比べてウラヌス・ネプチューン・サターンが追加されていました。そのため、タキシード仮面も含めた総勢11人及び敵が勢揃いするシーンでは、人数の多さから少しごちゃごちゃとした印象も少し受けました。
 一般的な演劇では舞台全体を見渡し把握できる事が場面づくりの基本となるためこうした印象を受けましたが、キャラクター性を重視する2.5次元舞台では「自分の好きなキャラクターに視線を向ける」ため、必ずしも全体を把握できる空間でなくて良いからかとも思います。特に後半にかけての大人数での乱戦シーンでは「どこに目を向けて良いのか分からない」くらいの目の前いっぱいを使ったアクションが行われており、このディズニーランドのパレードにも似た「全体を把握できない」要素こそ目前で行われるエンターテイメントの1つの醍醐味なのでは、とも感じました。
◎キャストについて
 前回の観覧時とは一部キャストが変更となっており、特にセーラームーン役での違いを感じました。前回のキャストの方がアニメのうさぎに似せた喋り方をしており、個人的に前回の観覧でかなり感動した部分だったため、新キャストが特に声質を似せたキャスティングでなかった事には少し残念さも感じました。新キャストの方が歌唱力は高いとの事だったのですが、序盤のシーンでうさぎとタキシード仮面のデュエットが有ったために、印象深くは残らなかった気がします。
 一方で、他のキャスト、特に外部太陽系の面々は歌唱力も高く感じ、敵方のキャストの演技力は非常に優れた印象を受けました。キャスティングをする際にも「歌唱力・演技力・キャラクター性・声質」など様々な考慮する要素が有りますが、圧倒的な技量と確率した演者の人気を持つタキシード仮面も含めて「何を重視するか」がキャラクターごとに異なっているのでは、という印象を受けました。
◎全体的な感想
 舞台を広く使う演出や必ずしもアニメとは一致しないキャストの声質などから、「アニメのキャラクターを引っ張りだす」というよりも、「ストーリーや世界観など原作を元にしつつも、1つの舞台として独立して面白いもの」を目指している印象を受けました。
 恐らくはテニミュなどのような「キャラクター・キャスト」を楽しみの軸にするタイプの2.5次元ファンが登場する以前からこちらが存在している事による、「1つの舞台エンタメとしての完成度」への追求があるのではないかと思います。同じ「キャストへの人気」と言っても、ベテランによるタキシード仮面には「新人を応援する喜び」は存在しませんし、キャストの性別を鑑みても他の2.5次元系舞台出身キャストの転用やその追いかけ、それによる「2.5次元ジャンル全体の中でのリンク的楽しみ」は無く、やはり「1つの作品」として単体で楽しむ向きが強い印象が有ります。
 一方で、「舞台として」は1つの作品にまとまってはいても、「セーラームーン」という作品のクロスメディア的展開の一端としては複雑な相関の中に在る事も確かであり、観客の客層として「舞台が好き」なのか「2.5次元が好き」なのか「セーラームーンが好き」なのかといった属性を調べる事ができれば、他の2.5次元舞台と比べた際のセラミュの独自性を炙り出せるのでは、と思いました。(4年生 岡田素直)

今回のセラミュは私の中でまた2.5次元の新たな魅力を見つけることができた。初めに、劇中、曲調がテニミュに似ているなと感じる瞬間が幾度とあった。それもそのはず、音楽を担当されたのはテニミュでお馴染みの佐橋俊彦さんであるからだ。例えばセーラー戦士と敵が向かい合って交互に歌を歌う際、演出も合わせて敢えて主人公サイドは観客に背を向ける構図になるが、「これから敵に立ち向かう」と描写している様で、青学に通じるところがあった。この様になんとなくではあるが、気づけるのは今まで自分が体験してきた2.5次元が体に浸透している証拠だと感じた。
キャストについてだが、第一に内部太陽系の4人の個性とキャスト自身の持ち味が上手く融合されていたと感じた。あみちゃんは透き通る様な美声の中で、芯の強さを劇中見せ、れいちゃんは赤のヒールが映えるルックスに、堂々とした動きがひと際目立ち、まこちゃんはやはりボーイッシュの中に時折見せるフェミニニティが印象的であった。そしてみなこちゃんはキャラクターのお茶目とキャストさんのチャーミングな一面が一致し、誰よりも可愛かった。彼女が敵に乗り込み、1人で自己紹介をするシーンや自分がリーダーじゃないのかと拗ねるシーンで、劇中にもかかわらず思わず「あ、可愛い」とこぼしてしまった。
次に外部太陽系の4人は内部とはまた違った女性らしさと強さを圧倒的歌唱力と共に感じた。特にサターンの歌唱力に圧倒された。私はキャラクターもほたるちゃんが1番好きであり、そんな彼女を演じたキャストの高橋果鈴さんはほたるちゃんのあの儚さと、女性特有の少女と大人の狭間に居る女の子を見事に演じていた。また、個人的に前回に引き続き参戦した、ウラヌスとネプチューンを目的にセラミュを鑑賞したいと思ったため、2人に最も注目をしていた。宝塚出身の2人ということもあり、見目麗しく、歌も申し分のない上手さであった。また、敵から攻撃を受けた後ははるかさんがみちるさんと寄り添いながら倒れ、歌う時も始終2人は手を取り合っている姿を目にし、まさに漫画からそのまま飛び出てきたと強く感じた。そして最後にプルート。原作のせつなさんは皆のお姉さんで、常に冷静沈着なクールビューティというイメージを私はもっていた。しかし、今回のせつなさんは他の戦士に負けずお茶目な一面を、ギャグを言ったり、はきはきと喋ったり、オーバーリアクションを見せるなどで見ることができた。キャラクターの本来の性格と異なる様にも思えるが、それが決して不快ではなく、「もしかしたら違う世界線ではせつなさんはこんなに無邪気なかもしれない」と新しいキャラクターに出会えた様な気持ちになり、素直に楽しむことができた。
 セラミュは2.5次元舞台のパイオニアとなった宝塚の伝統の継承と、プロジェクション・マッピングの様な徐々に最新のものを取り入れる今日の新しい2.5次元文化の融合を実現させていた。語り足りないほど、私はこのセラミュをあらゆる五感を通して大いに楽しむことが出来た。次回作も是非足を運びたい。(4年生 清水桃香)


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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