2019年1月11日
池田理代子先生の講演2
お知らせ

学生の感想第2弾です。

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先日、池田理代子先生のインタビューを聴講しました。先生は名作『ベルサイユのばら』の創作から出発して、日本戦後日本の女性の社会進出の歴史をめぐって論じました。先生の見解を考えたうえで、いろいろな感想は生み出されました。

1 マリー・アントワネットの人物評価から見えるジェンダー規範の非対称性

フランス革命中、マリー・アントワネットは世の中でも有名な人物だと思っています。もちろん、ブルボン朝はフランス革命中において絶対王権を守るために、市民階層のライバルになり、悪役とみられました。ただし、ルイ16世の王妃マリー・アントワネットーー元々フランス人ではなくオーストリアのプリンセスは、夫のルイ16世よりも注目されました。この美しく、わがまま、軽率な女性は、特に当時の平民と後世の歴史学者に批判されて、「赤字夫人」とも呼ばれました。一方、文学・漫画・映画など作品において、彼女に同情を寄せる声も多いです。

やはり女性は歴史舞台に登場すると、男性より複雑な評価を受けることは多いと思われます。なぜなら、ジェンダー規範の非対称性からであると思います。歴史上でも現代社会でも、一旦女性は過失を犯したら、男性より罪悪感が強いと考えられます。これも、男女格差の一側面なのではないでしょうか。同時に、女性はより多くの同情を寄せられることは、社会通念で女性に対してのある程度の寛容さを明らかにします。ただし、こうした寛容さもまた男女の非同一視の立場から生み出されます。

2 「少子高齢化」社会における女性の立場

女性の社会進出は、ずっと前からよく検討されました。人間社会は何千年も続きましたが、女性が社会に進出して男性と一緒に職場で仕事をするようになったのは、まだ二百年ほど前からのことです。女性は家父長期の社会において、男性と同じく労働したりして戦ったりするという欲望は強くて、男性より強い「オスカル」のような主人公は少女漫画や小説の中でよく登場します。つまり、女性が社会に進出する願望は無視できないと思います。

現実に戻って、少子高齢化社会において最大の問題点は、出産率の低下であると思われます。こういう問題を解決するために、「女性は進学や仕事はせずに家事や育児に専念したほうがいい。」という意見はよく聞かれます。しかし、これは本当に解決策でしょうか?少子高齢化社会において、労働力不足という問題が深刻になってきています。そして、女性の社会進出は、社会に大量の労働力を提供して、さらに経済発展を推進して、育児支援の充実も実現していきます。女性の育児環境を改善することは、「少子高齢化」という問題の究極の解決策になるはずです。 (都市イノベーション研究院都市文化系 修士1年 リ・ミンイク)

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私がベルサイユのばらを知ったのは宝塚歌劇団での公演でした。その時、迷いながらも信念をもって困難に立ち向かうオスカルに心惹かれました。その後漫画も全巻購入し、何度も読んで、何度も感動させられました。講演会で池田利代子先生は架空の人物には作者自身の思いを語らせやすいとおっしゃっていました。つまり、私がオスカルの言葉として感動していた一言一言は、実は池田先生のお言葉だったのです。池田先生は、女性漫画家として、世間の賞賛と同時に、批判にもさらされてきたとおっしゃっていました。しかし、それを語る池田先生はどこか冷静で、客観的に自分の意見を述べられていました。それは信念をもっていい作品を作り上げたという自負があるからこそできることなのではないかと思いました。

講演会の後の宝塚歌劇団のOGの方々によるミュージカルにも、信念をもって強く生きている姿が現れていて、心打たれました。宝塚では、出演者自身の苦労が多く語られることはありません。このミュージカルを見て、OGの方々が退団後、苦労しつつも自分の幸せのために力強く生きていることがわかり、同じ女性として憧れます。

『ベルサイユのばら』や宝塚歌劇団の素敵な作品をつくるためには、作り手としての信念を持ち、一人の女性として強く生きていくことが必要だと感じました。これから社会に出ていく一人の女性として、この講演会に参加できてよかったです。(都市科学部都市社会共生学科2年 岡村夏希)


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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