2019年6月24日
[舞台鑑賞] ロックオペラ「R&J」3
2.5次元ミュージカル・ライブシアター

学生の感想、第3弾です。


4. 都市科学部都市社会共生学科2年 岡崎美瑛

 まず私は、高校の授業中少し映像で観るぐらいにしかオペラに関わったことがなく、無知であった。またオペラに対して、なんとなく堅苦しさ・近寄りづらさを感じていた。しかし観劇中、これらのようなマイナスな感情は全く生じなかったのである。それはきっと、この作品が単なるOperaではなく、Rock Operaだったからなのだろう。私のオペラに対する苦手意識は、冒頭のド迫力な演奏によって一気に消え去った。そして、ギターの電子音と出演者の雄たけびが会場中に鳴り響いた瞬間、鳥肌が立った。事前にこの作品について調べた際、“今まで誰も観たことがない”というキャッチフレーズをよく目にしていたし、Rock Operaということもあって、未体験な感じがするのだろうなとは予想していたが、こんなにもぶっ飛んでいる感じなのか!と驚いた。観客は私たち学生を含め若い人が比較的多く、従来のオペラにはないこのわくわく感が、若者に受けるのだろうなと思った。その後も、お芝居・踊り・音楽がうまく融合しており、ずっと夢中で観ていられた。まさに未体験の舞台だった。

 また私が観劇して疑問に思ったことが一つある。私はロミオとジュリエットの原作を読んだことがあるが、そこでは手違いで、ジュリエットが仮死状態であることが、ロミオに伝わらなかった。しかしR&Jではなぜ、神父様はロミオにわざと事実を知らせず、最終的にロミオだけではなくジュリエットも死に至らせてしまったのだろうか。そしてこの原作との違いは、観客である我々に、何を伝えたかったのだろうか。個人的には、神父様とジュリエットの乳母であるレオナが愛し合っていて、今後も続くであろうジュリエットの世話を煩わしく思うようになったから、わざと知らせなかったのかな、と思っている。ちょうどロミオと恋に落ちたときに殺害計画をひらめき、ジュリエットを(ついでにロミオも)亡き者にしたのだろう。あくまで予想だが、この解釈であっている気がする。しかしなぜ、敢えて原作と異なる演出をしたのだろうか。観劇中も後もずっと考えていたのだが、よくわからなかった。しいていうなら、R&Jは近未来の機械化による格差社会が舞台であり、人の負の部分というか、怖い部分を表現することで、格差社会の闇を表現したかったのかったのかな、と予想している。しかし、真意はよくわからない。

 今回、舞台R&Jを観させていただいて、改めて新感覚のものに触れる面白さを実感した。またこのような新しい分野の舞台を観たいと思う。このような素敵な機会に、心から感謝したい。


5. 都市科学部都市社会共生学科 2年 遠井信太朗

 想像していた何倍もの感動を与えられました。貴重な経験をさせていただきましたことに心から感謝しております。ありがとうございました。

 そもそも「ロックミュージカル」とはどういうものなのか、そしてそこで「ロミオとジュリエット」という作品がどのように演じられるのか、という疑問を開演前には感じていました。また公式サイトを拝見し、時代設定が近未来で、ストーリーが反社会勢力と警察組織の抗争の中での恋物語だということを知って、原作との違いを感じたことから、どのような物語が進行するのかとワクワク感を抱いていました。

 実際に作品を拝見させていただいて、ロックという表現方法が物語と非常によくマッチしていると感じました。こう考えたのには2つの理由があります。1つ目の理由としては時代や舞台セット、登場人物の立場とロックの相性が良いと感じたことです。近未来でありながらも、どことなく荒廃した雰囲気を漂わせている舞台セットで、若者がそれぞれの主義主張を戦い合わせているという状況に、ロックの激しい音が非常に合っていると感じました。個人的には、ティボルトが警察の権威や大義名分について語るシーンの曲が、迫力があり台詞の説得力と相まって印象的でした。2つ目の理由としては、ロミオとジュリエットの激動する感情や状況が的確に表現されていると感じたことです。喜怒哀楽をはじめとした様々な感情の間を常に揺れ動く彼らには、気持ちを吐き出すようにぶつけるロックの曲調が合っていると感じました。悲しいシーンでは、バラードのような曲も見られましたが、喜びや楽しさを表現するのに強く激しいロックの音が使われているからこそ、繊細な悲しみの気持ちが一層引き立てられていると感じました。

 作中で最も印象的だったのは、ロミオとジュリエットが初めてデュエットをするシーンでした。それまでジュリエットが歌うシーンでは、必ず誰かしら他の人物が一緒に歌っていました。ここにはジュリエットが家の人間に囲まれて、(悪くとらえれば束縛されて)生きていることが表れているのではないかと思ったのですが、そのジュリエットが初めて一人で歌ったシーンだったので非常に印象に残りました。

 最後まで疑問だったのは、神父と乳母がなぜロミオに計画のことを伝えなかったのかということです。この二人の人物の立場が、私は最後の最後までつかみきれなかったと感じています。どこかのシーンで彼の立場に関する言及がなされていたような気がしているのですが、思い出せません。7月27日にTBSで大阪公演の収録が放送されるそうなので、そこで確かめたいと思います。何度でも見たくなる、素晴らしい作品でした。


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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