2021年3月08日
3/6(土)科研費学会・第6回2.5次元文化を考える公開シンポジウム 無事終了しました
2.5D プロジェクト

2021年3月6日(土)10:00~16:00 オンラインでの開催となった、「科研費学会・第6回2.5次元文化を考える公開シンポジウム~2.5次元文化研究の最前線~」は、好評のうちに無事終了いたしました。ご参加下さった方、ありがとうございました!

 リアルな会場ではおそらく不可能だった、海外からのご参加や、遠隔地からのご参加もあり、大変うれしい限りでした。午前中の理論パネル岩下朋世先生のマンガを2.5次元として考えるという問いは、漫画表現史からひも解いていく画期的な試みでした。清水知子先生の、ディズニーミュージカルはなぜ2.5次元と捉えられにくいのか、という問いから発した身体の政治学は、豊富な資料・文献とともに、体現的パフォーマンス、修辞的パフォーマンスという概念を援用したスリリングなご発表でした。川村覚文先生の「情動」をキーワードにした「ラブライブ!」に関するご発表も、儀礼を通じて信仰が生じるという構造を、多面的に分析され、情動を触発するメカニズムについての大きな問いを提示されました。

 午後は各論として、藤原麻優子先生が、演劇・ミュージカル研究者からみる2.5次元ミュージカルの解釈という、2.5次元舞台を知らない人にとってのわかりやすいガイドにもなりえる分析をされ、「二次元リテラシー」の獲得のご提案をされていました。筒井晴香先生は、「推し」を見る行為という熱烈なファンであれば誰しもが行っていることを、理論的に、そして舞台「PSYCOPASS」を例にするどい分析で解読してくださいました。次に発表した私(須川亜紀子)は、このプロジェクトで行ったウェブアンケートについて紹介。特にあまり議論の中心にない海外の2.5次元舞台ファンの活動とその意味についてごく一部について論じました。時間の関係で詳細を話せなかったアジア、北米、欧州、南米など地政学的に、そして宗教、民族、エスニシティ、などの数種のバックグラウンドも含めて、今後も調査を行っていきたいと思います。そして最後は国内のファンダムについて、田中東子先生がご自身の体験をベースに、女性ファンが男性キャストを消費する政治性について論じてくださいました。フェミニストであることと、男性性を消費することに生じる矛盾、そして男性が女性アイドルなどを消費・搾取してきたことの逆転というように、単純なシンメトリーではないことは、今後も議論していきたいトピックだと思いました。

 全体討論では、標葉隆馬先生が、各発表のポイントを整理し、議論のきっかけを作って下さり、活発なディスカッションができました。議論を通じて考えたことは、2.5次元という回路を装置として活用、利用することの可能性、そしてその意味です。プロジェクトの成果発表という位置づけでしたが、たくさんの宿題をいただき、今後も研究していきたいと思います。


須川亜紀子
須川亜紀子
Akiko Sugawa-Shimada
横浜国立大学 都市科学部/都市イノベーション研究院 教授
Professor, Department of Urban Sciences/ Institute of Urban Innovation Yokohama National University
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